NIPPON VEDANTA KYOKAI
Vedanta Society of Japan |
不滅の言葉
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1996年5号
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自由の宗教ヴェーダーンタ | ||
スワミ・ブターナンダ | ||
そのとき以来今日に到るまで、多くの聖者や賢者たちがインドに現われた。そして各自がヴェーダーンタの一面を力説した。各自が、各自の人生で、実現されたヴェーダーンタとは達成された自由である、ということを証明した。 最後にわれわれはスリ・ラーマクリシュナに到達する。シャンカラとラーマーヌジャの教えの主義上の争いはラーマクリシュナの教えの中でことごとく溶解した。スリ・ラーマクリシュナはヴェーダーンタの偉大なる福音を全く新しい方法で教えた。かれは、シャクティと呼ばれるもの即わち「聖なる母」とブラフマンとは同一であるということを説明した。シャンカラのヴェーダーンタではこの世界は非実在であると述べられている。しかしラーマクリシュナは言った。なぜそれを非実在と言うのか? なぜ神御自身が一切物になっているのだ、と言わないのか? かれはいどむように尋ねた。もし偶像を通して神を礼拝することができるなら、なぜ人間を通して礼拝することができないのが? と。かれは、もしひとが信仰の力を持つなら、人間の中に神を見ることができる、と言った。 スリ・ラーマクリシュナは神としての世界、神としての人間、および人を神に導く諸々の道程のすべてに特別の霊的妥当性を認めた。それゆえ諸君が見られる通り、かれは、各自が選んでみずからの好む道を取りそして解脱するように、いわば霊の全き新世界を人類に与えたのである。かれの偉大なる弟子、スワミ・ヴィヴェーカーナンダはスリ・ラーマクリシュナを「世の束縛の破砕者」と呼んだ。スワミ・ヴィヴェーカーナンダはスリ・ラーマクリシュナの福音を次のような言葉で要約した。「一切の霊魂はその内部に神性をひそませている。その目標は、外部および内部の自然を統御することによって、この内在の神性を明らかにすることである。このことを働きによって、または信仰によって、または心霊的統御によって、または哲学によって、これらのうちの一つ或いはその幾つかによって、或いは全部によって為せ。そして自由になれ。これが宗教のすべてである。教理、教義、儀式、書物、寺院、形式は二義的な項来事にすぎない。」自由になれ! とにかく自由になれ。これがヴェーダーンタの激励であり、よびかけである。ヴィヴェーカーナンダはかれのヴェーダーンタの教えの中で人間の魂の栄光、人間の力、この全き無恐怖と無我の真の基礎となるものをたえず強調した。ヴィヴェーカーナンダの教えの中でヴェーダーンタは、古代以来の霊の解放者でありつつ同時に社会的および政治的自由の原動力となったのである。 他の如何なる宗教も、人間の力をヴェーダーンタのようにこのような壮大な姿で捕えたことはない。その結果、他の如何なる宗教も、現代のすべての政治的経済的向上心に対して、ヴェーダーンタのように批判の余地なく破ること不可能な耐久力ある基礎を提供したことはない。そして他の如何なる宗教も現代の科学的精神をヴェーダーンタのように尊敬したものはないのである。 だが、ヴェーダーンタはこのことを世界のあらゆる宗教に代って為した、と言うほうがむしろずっと正しい。われわれが生きている現代におけるかずかずの事実や勢力は政治的に、経済的に、またその他の面でわれわれを不安におとしいれる或る種の難問題を提供しつつある。いたるところに、しばしば疑わしい結果にも導く自由への熱烈な運動がある。全世界は変りつつある。そして文字通りかき乱されている。新しい形式や標準が出現しつつある。時には脅迫するようなやり方で。ひとびとはうろたえ、当惑し、恐れている。哲学者、社会学者、宗教的指導者たちは、世界の諸勢力のこの広大な動きに対してさまざまの解釈を与えている。ヴェーダーンタは提供すべき独自の解釈を持っている。それは言う。「われわれは多分かつてないほどの非常に重大な時期に生きている。しかし恐れてはならない。うろたえてはならない。運命が人間に今日ほど偉大な敬意を表したことはない。一切の矛盾衝突の中にあって、この事実を理解せよ。困惑するな。混乱、不穏は最高のよびかけを含んでいる。出会いは文明と文明との間に起っているばかりではない。大気圏外の宇宙が人類に向かってまさに開かれようとしているのだ。」これらのよびかけは、人類の魂に尚一層の情熱と自由への要求を吹きこんだ。歴史には逆行というものがない。宇宙における如何なるものもこの力をとどめることはできない。束縛の下にある方がたやすく向上することができる、などと言う人もあったような時代は既にすぎ去った。他者を自由にし、荒れ狂う諸勢力に一つの創造力、ある方向を与えるのは自由を得ている者の責任である。何をなすべきか? 何ものかが必要である。歴史に明らかなこの真正な魂の運動によって人類のすべての願望を統合調整するために、何らかの指導原理が必要である。この指導原理、哲学、方向、その他諸君がそれを何と呼ぼうとも-はほかでもないスリ・ラーマクリシュナの次の言葉の中に含まれている。「不二一元論のヴェーダーンタの知識をしっかりと把握せよ。それから何でも諸君の欲することを為せ。そのとき諸君には如何なる悪も起らないであろう。」 スワミ・ブターナンダはラーマクリシュナ僧団の一員、数年来アメリカに駐在、この講演は昨夏ハリウドの南加州ヴェーダーンタ協会でなされました。 |
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