第135回生誕記念日祝賀会パンフレット
ラーマクリシュナ・マートおよび
ラーマクリシュナ・ミッションの活動
シュリ・ラーマクリシュナの理想を維持するためにその没後設立されたオーダー(修道院)は今、インド内外に135の支部を持つに至った。その本部はベルル・マート(僧団)にある。法的に見ればこの組織は、ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッション(奉仕団)という両翼を持っている。しかしその差異は些細なものであり、しばしば重複し、従ってその差は、実際的というよりも理論的なものである。ミッションの管理体はマートの理事から構成され、ミッションの管理は大部分マートの僧がおこなっているので、マートとミッションは密接に関連し合っている。マートとミッションの両者の起源はバラナゴール僧院の頃までたどることができるが、マートは1901年に初めて委員会として登録され、ミッションは、スワミ・ヴィヴェーカーナンダによって1897年5月1日に創始された12年後の1909年に団体として登録された。しかし人びとは、ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションの両者を意味するものとして、漠然と「ラーマクリシュナ・ミッション」という名称を用いている。
違いを強調すると、マートとミッションは両者とも、慈善福祉活動を行っているが、前者は人びとの霊性の開発に重点を置き、後者は福祉活動を優先させている。双子の組織が従うモットーは同じである。スワミ・ヴィヴェーカーナンダは彼らに、"Atmano moksartham jagaddhitaya ca" ―― 礼拝の精神で世界に対して善を行い、かくして、自身の救いの道をならすこと、をモットーとして与えた。次節以降は、スワミ・ヴィヴェーカーナンダの理想を実現するために、マートとミッションが実行している活動を簡単に示すものである。
救援活動
ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションは当初から、洪水、飢饉、干ばつなどの自然災害時に救援活動を行ってきた。公の支援金が救援活動のための主な財源である。1995〜96年にミッションは、救援と社会復帰活動のために589万ルピーを支出し、救援物資として1、497万ルピー相当額を支給した。
医療活動
病人に対する奉仕のプログラムの一部分として、ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションは、入院患者用の病院と外来用施療院、移動健康ユニットなどを経営している。1995〜96年には、協同して、(1)入院患者7万5、284名と外来患者228万0、469名に対して2、061のベッドを有する14の病院を持ち、(2)95ヵ所の外来患者施療院では277万3、201名の治療を行い、(3)28台の移動施療車で76万6、678名の患者に医療処置を施した。ミッションはまた、ビハール州のランチに結核の療養所一棟と、デリーに結核の診療所を一カ所有している。
教育活動
スワミ・ヴィヴェーカーナンダは、教育と知力が民衆に広まるのに比例して国家は進歩すると言っており、「教育、教育、教育だけ」がインドの問題の万能薬であることを強調した。従って、マートとミッションは、限られた資源の中で、より良いインドを建設するために人びと各々がその役割を果たせるように民衆の教育に当たっている。彼らが運営する教育センターには、5つの学位授与大学、5つの教員養成大学、11の高等学校、34の中等学校、及び、宗派の違う137の学校、7つの初等技術工業学校、2つの農業研究所、2つの言語学校、1つのサンスクリット大学、2つのサンスクリット学校、4つの科学技術高等専門学校、1つのコンピュータセンター、及び471ヵ所の非公式の教育ユニットがある。さらに、両者は97の学生ホーム、ホステル、孤児院と、少年盲学校を1つ持っている。1995〜96年の間にこれらの施設で教育を受けた全学生数は16万8、566名で、そのうち少年は10万8、228名、少女は6万0、338名であった。
婦人を対象とした事業
「あらゆる国家は、女性に正当な敬意を払うことによって偉大になった」、女性を無視して国家は発展できない、両翼の一方がなければ鳥は飛ぶことができないように、とスワミ・ヴィヴェーカーナンダは言った。ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションは、従って、女性を無視したり見下すことはしない。救援活動と医療奉仕は男女に対して同様に行っている。女性は男性と同様、センターの神殿を訪ねたり、公の祝賀会、クラス及び集会に出席したり、図書館施設を利用することができる。さらに、センターによっては女性専用の施設を有している。その一部を列挙すると、(1)カルカッタ、トリヴァンドラム、及びヴリンダーバンにある病院の産婦人科、(2)ジャルパイグリとケートリの家庭介護及び産科診療所、(3)ヴァラナシの病弱婦人ホーム、(4)マドラスのサラダ・ヴィドヤラヤ、(5)ジャムシェードプルの三つの女子高等学校、(6)サリシャのサラダ・マンディル、(7)トリヴァンドラム、ヴリンダーバン、イタナガル、及びカルカッタの四ヵ所の看護婦養成所。
文書及び説教を通じて、ラーマクリシュナ・マートの僧侶は、男子の婦人に対する義務と、男子の婦人に示すべき敬意を忘れさせないようにしている。しかし、婦人問題は婦人自身が取り扱うことによってより良く解決される、また、婦人問題に対する男子の干渉は有害である場合が多い、というヴィヴェーカーナンダの見解を考慮して、彼らは婦人に関しては一定限度内で活動している。彼らはこの課題の主要部分を、同じ理想を持っているがラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションから完全に分離した、婦人専門の組織である、ラーマクリシュナ・サラダ・マート及びサラダ・ミッションに委ねている。
青年に対する活動
ヴィヴェーカーナンダは国の青年に希望と信頼を置いていた。マートとミッションは、従って、青年、特に彼らの道徳の向上に特別に意を用いている。彼らが経営している多くの学校以外でも、僧たちは常に青年たちと接触するよう努力している。青年たちは研究サークル、セミナー、青年フォーラムを通じて、スワミ・ヴィヴェーカーナンダのメッセージに親しむようにされている。この点に関して、カルカッタのラーマクリシュナ・ミッション文化研究所のヴィヴェーカーナンダ研究サークルについて特別に言及されなければならない。これは青年のフォーラムで2週に1度同研究所で会合を開き、カルカッタと田園地方では週末に青年の集会を開いている。
弱者への考慮
医療奉仕、貧困救済、及び教育を行うに当たって、ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションは、物質的及び文化的の両面での弱者の要求に対しては特別の考慮を払っている。その限定された資源の範囲で修道院は、国のさまざまの地域で、貧困者、遅れた人びと、及び部族の人びとの悪条件を緩和するように努力している。目標は、彼らの失われた個性の回復と、彼らを世間一般の風にあてることである。
マートとミッションはこれらを三つの方法で実施している。(a)遅れた人びとを地方から連れ出し、彼らをインド文化の主流に触れさせる、(b)専任のワーカーを地方に派遣し、そこで、他のインドの人々と同じ状態に徐々に引き上げるために彼らに現世的な知識を与える、(c)マートとミッションの運営する医療、教育施設は、貧困者または遅れた人びとに食事を提供し、必要な時には救済活動を拡大して行っている。マートとミッションはこれらのすべてを同情の精神ではなく、神への礼拝という精神で行っている。
霊的また文化的な活動
マートとミッションの両者は、インドの霊的及び文化思想の普及に力を注いでいる。正規のクラス、集会、公的祝賀会、書物の出版などを通じてこれを行っている。これらの手段を通じて、道徳的・霊的な遺産、人は他人のために生きるときはじめて人生が価値あるものになる、という事実を人びとに知ってもらうように種々の試みをしている。宗教に関して言えば、彼らは、シュリ・ラーマクリシュナの生涯と教えの中で例証されている普遍的なヴェーダーンタの真理のみを説いている。人間は潜在的に神聖であるということ、彼らが巨大な可能性を持っていること、を理解させようとしている。
これらのメッセージは、ラーマクリシュナ・ヴィヴェーカーナンダ文献、ヴェーダーンタ、及びインド学の書物の出版を通じて多くの人びとに送り届けられている。10ヵ所以上のセンターで、英語、ベンガル語、ヒンディー語、その他のインド諸語の書物が出版されており、マートとミッションは500以上の書目と12の雑誌を発行している。
外国のセンター
ラーマクリシュナ・マートとラーマクリシュナ・ミッションは全世界にわたって支部のネットワークを持っている。シュリ・ラーマクリシュナとスワミ・ヴィヴェーカーナンダの教える人類の調和を信じて、マートとミッションは、西欧とギヴ・アンド・テイク、互恵の原則に立ちながら活動している。スワミ・ヴィヴェーカーナンダが言っているように、インドはヨーロッパから外的自然の征服を学び、ヨーロッパはインドから内的自然の征服を学ばなければならない。2つの文化は相互補完の関係にある。マートとミッションは、米国、カナダ、アルゼンチン(南米)、英国、フランス、スイス、ロシア、日本、フィージー、モーリシャス、シンガポール、バングラデシュ、及びスリランカにセンターを持っている。これらの地域で、ラーマクリシュナ修道院の僧たちは、ヴェーダーンタと、ラーマクリシュナ・ヴィヴェーカーナンダの普遍的なメッセージの伝道に積極的に従事している。