不滅の言葉 98年2号
ヒラマヤ山脈の膝元にて――神聖なる放浪(5)
スワミ・アカンダーナンダ
部分
第三章 ガンゴートリ(下)
彼はパラマハンサ
ナーガ・サードゥたちは休息所の四面にあるベランダで眠った。私もまたすぐ近くの木の下で眠った。次の日、私が目を覚ましたとき、幾人かのナーガ・サードゥが不思議そうに私を見つめているのに気がついた。中には休息所の中に入って病気のサンニャーシンを見てきた者もいた。彼らは驚いて私を見ていた。その一人がヒンディー語で、「おお、神よ! 彼はパラマハンサだ。そうでなければ、私たちが彼を大いに罵ったとき、どうしてあんなにも穏やかでいることができたであろうか」と言った。そして、彼らの二、三人が私のところにやって来て、夜の間に起こったことについて詫びを言った。私は何も言わなかった。私は部屋に入って、病人の様子を見た。彼は今はもうだいぶ良くなっていた。私は幾らか木端を集めて、彼の前でドゥニを点した。すると、彼は自分の荷物から小麦粉を少し取り出し、パンを焼いてくれるよう私に頼んだ。私は焼き始めた。サンニャーシンと話しているうちに、彼がマルワリから来たことを知った。彼はバドリとケーダルへ向かう巡礼者であった。彼は痔で苦しんでおり、途中で病気になったのである。また金を誰かに盗まれてもいた。
哀れな僧
私がその僧と話している間にビジューがやって来た。彼は僧に昨夜の労働の報酬として四アンナ払うよう求めた。しかし、その僧は困った顔をし、金は持っていないから一パイサも払えない、と言った。しかし、僧は、調理用具や衣服などこまごまとしたものをたくさん持っていた。彼がそのうちの何かを与えたなら、ビジューは十二分に満足したであろう。ビジューもサードゥにそう言ったのである。しかし、サードゥは頑として受け付けなかった。彼はビジューに腹をたて、ついには昨夜ビジューに彼を運ばせた私をも叱りつけた。彼が興奮して病気が重くなるのを恐れて、私はビジューに外に行くように頼んだ。ビジューに後でいくらか支払うことを私は約束した。彼は立ち去った。
ローティを二、三枚焼いてから、私は僧に食べさせた。そのあと沐浴して、私は村へ托鉢に行った。その日、村人たちは大変親切であった。私のことを聞いて、村人の一人はビジューに二アンナ支払い、別の者はあとで二アンナ支払うことを約束したので、私は支払いを免れたのである。
人の死に行く道
私がその村からダルマサラに戻ったとき、その僧はもうほとんど死にかけていた。彼の喉は痰で塞がれ、大きく空けて息をする彼の口の周りに蝿の大群が飛び回っていた。私が彼のもとを発つ前には、彼がすぐに息を引き取るなどとは思いもよらなかった。私は大声で叫んだが、彼を呼び戻すことはできなかった。今や私の声に耳を傾ける者はいなかった。二、三時間前、この男は自分の手回り品にしがみついていた。彼には感謝の気持ちがなかっただけでなく、自分の恩人をののしりさえしたのである。彼は自分を安全で快適な場所へ連れて来てくれた者を侮辱して恥じなかった。彼の周りを飛んでいる一匹の蝿に突然反応した彼のからだ――彼のエゴの容れもの――は、今は蝿の大群のなすがままになっていた。彼がしがみついていた品物は、今押収されようとしていた。私が村にいた間、一人のテフリ王の将校(パトワリ)がやって来て、彼の持ち物すべてを記録し、取税局にその一覧表を持っていった。最後の瞬間、私はガンガーの水を僧の口に注ぎ、彼の耳の中に神の名を唱え入れ、かくして彼は息を引き取った。しばらくすると、彼の死を聞きつけたパトワリが再びやって来て、彼の持ち物を全部集めた。驚いたことに、持ち物の中に二アンナも混じっていることを知った。私はパトワリに、その二アンナを私にくれるよう頼み、それをビジューに渡した。お陰で、私は、ビジューとの約束から解放されたのである。今の私にとってその死体を運ぶことは、容易なことではなかった。私は悲しかった。村のバラモンもラージプートも誰一人として僧の葬儀を挙げようとはしなかった。ほかに手段がなかったので、二人の男の助けを借りて死体をガンガーに投げ捨てた。この丘陵地帯では、葬式としてこれが一番簡単な方法なのだ。このことのために、私は、バトワリで二、三日無駄に過ごした。
ガンゴートリでの恍惚状態
私はバトワリを発ち、四日後にガンゴートリに着いた。ダラスがガンゴートリへ向かう途中の最後の村であった。ガンゴートリはこの地から約二五マイル(約四〇キロメートル)離れている。私は半分の距離を踏破して、バイラヴァ・ゾーラに着いた。ガンゴートリへの巡礼者は、まずここに参拝するのである。途中、この小さな寺院を除いて、人家やチャッティ(店)は一軒もない。バイラヴァ・ ガティに着いたあと、私は道を見失った。別の川であるボート・ガンガーがここで主流のガンガーと合流する。しばらく歩き回っていたら、少しして再び街道にたどりついた。......................