ラーマクリシュナ・ミッションの創設

  スワミ・ヴィヴェーカーナンダが霊的な奉仕から物質的な奉仕に至る、あらゆるレベルにおける奉仕――僧も信者も一般大衆も協力できる奉仕――のための組織を発足させる意図をもっていたことは、すでに私たちの注意してきたところである。従って、彼がダージリンから帰ると、全僧院とシュリ・ラーマクリシュナの俗人の弟子の会議を招集した。会議は一八九七年五月一日土曜日午後三時に、バララーム・バーブの家で行われた。全員が集まったところで、スワミのベンガル語による次の言葉で、会議は始まった。

私があちこちの国を旅して得た結論は、組織なしでは、何か大きなこととか永続性のあることはできないということです。だが、インドのような国において、現在の発展段階にあっては、民主主義を基盤にした組織を作るのがいいとはとても思えない。つまり、全員が平等の発言権を有し、多数者の投票で決定に至るというものです。西洋では事情が違います。……私たちでも、教育が普及して、自己犠牲や個人の利害関心を越えることを学んで、共同体や国民一般のためになることをするようになれば、民主主義的基盤で行動することが可能になるでしょう。この点を考慮に入れて、当分の間私たちの組織には議長を置き、皆がその人の指示に従うということにしようではないか。そして、機が熟すれば、組織のメンバーの意見と同意によって運営されるようになってゆくでしょう。

 この組織は、その人の名において私たちがサニャーシンになったお方の名前を帯びることになろう。このお方を諸君の理想として掲げ、家住者として諸君はこの世(サンサーラ)で活動している。このお方の聖なる御名、それにこのお方の独自の生き方と教えは、このお方が亡くなられてから十二年も経たない間に、思いもかけない形で東西両洋に拡がっていった。従って、このサンガ(僧伽=組織)をラーマクリシュナ・ミッションと名づけようではないか。私たちは師のただの従僕にすぎない。師よ、どうか私たちの仕事をお助け下さい!

 この提案はすべての家住の弟子たちによって熱狂的に支持された。将来の行動準則が論議された。この五月一日の会議において、ラーマクリシュナ・ミッション・アソシエーションは設立された。そして五月五日の第二回会議で、運動運営の主原則と運動の目的・対象を起草する決議案が可決された。オリジナル草案は左記のごとくである。

 本組織(サンガ)をラーマクリシュナ・ミッションと命名する。今後はこの名で知られてゆくことになろう。

 このサンガの目的は、シュリ・ラーマクリシュナが説いた真理を伝道することである。その真理は、人類の福利を願って説かれ、自身の生活に応用して証明したものであり、人々が時間的に、精神的に、霊的に前進してゆくためにこれらの真理を生活の中で実践してゆくのを助けるためのものである。

 本ミッションの任務は、シュリ・ラーマクリシュナによって始められた運動の諸活動を心正しき人々に伝え、異なる宗教の信者の間に友情や親交を育み、それらの人々に、様々な宗教の形態はあるけれども、一つだけ不死で永遠の宗教があることを知らしめることである。

   行 動 準 則

(a)人々を訓練して他の人々を教導する能力を与え、大衆の物質的・霊的福利に資する知識や学問を伝える

(b)諸々の技芸と産業の促進と奨励

(c)一般大衆の間にヴェーダーンタおよび他の宗教の理念を紹介し普及させ、その過程でシュリ・ラーマクリシュナの生涯について理解を図る

   インド作業部

ミッションの活動はインド各地のマート(僧団)とアーシュラマ(道場)の建設に向けらられる。それらはサニャーシンと家住者の教育に充てられる。家住者はほかの人々の教育に喜んで生涯を捧げるような人が望まれ、資金や手段を確保して教育を可能ならしめ、州から州へと移動しながら教育に当たる

   外 国 部

訓練された教団のメンバーをインド以外の諸国に派遣し、その地にセンターを設立してヴェーダーンタの教えを拡め、もってインドと諸外国との間の緊密な関係とよき相互理解をもたらす

 ミッションの目的と理想は純粋に霊的・人道的であって、政治とはいかなる関係も持つことはない。

 シュリ・ラーマクリシュナの使命を信じ、あるいはそれに共感し、あるいは本協 会の上記の諸目的と対象に協力を望まれる人は、会員に推挙される資格を有する。


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